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アメリカは日本化するか

by on 2009/05/11

完全に翻訳ブログの様相を呈している本サイトであるが、Are We Turning Japanese?: The Balance Sheet: Online Only: The New Yorker が面白かったのでざっと訳してみた。面白いことに、この記事を翻訳中、THE STALIN の STOP JAP が流れて「お前はいったい何人だ!…潰してしまえ!潰してしまえ!」と歌い出した。ここには何か非常に優位な関連が見いだせるのではないだろうか。ちなみにその次にかかった曲は爆風スランプ「青春りっしんべん その2」であった。このiPod大好き。長岩は経済学素人なので訳語は適当です。あしからず。むしろ翻訳を通じて勉強しようという算段で一石二鳥。

ここ数日、オバマ政権が銀行の国有化に失敗することにより、アメリカ経済は日本の失われた十年と同じ状態に陥る、という見解が随分と顕著になってきている。(Krugman、Stiglitz、Thoma、Atriosが指摘している。)ストレステストの結果から、この政権が逆境に立ち向かうため銀行に頼っているのは明らかで、今後2年間で資本注入を行う模様だ。しかし懐疑論者はこれこそが破滅を呼ぶ考えだと言う。日本ではうまくいかなかったからだ。そこでは、政府によって資金注入を行われた銀行がうまく健康を取り戻すことはなく、政府はさらなる対応を取らなければならなかった。Bloomberg は第一段落からしてこうだ。

財務長官ティモシー・ガイトナーは、1990年代に日本の銀行ができなかったことをアメリカの銀行ができると考えている。

前にも書いたが、オバマのアプローチに関連して、日本の失敗の経験が繰り返し強調されるのはどうもオカシイ。日本の銀行は1990年代に困難から抜け出せなかったかも知れないが、アメリカの銀行はそうではなかった。80年代前半にも90年代前半にも、アメリカの銀行はトラブルにうまく対処したのだ。その点を考慮すれば、Bloomberg の第一段落はこう書き換えるべきだ。

財務長官ティモシー・ガイトナーは、アメリカの銀行が今まで2回成功したことを今回もできると考えている。

日本に言及する際の前提は、1990年代の日本経済における問題は銀行のゾンビ化とそれによる貸し渋りだ、というものだ。しかし、Ryan Avent が指摘するように、Krugman 自身、日本の実際の問題が銀行にあったかどうかは疑問だと言っている(にもかかわらず今日のコラムで日本に言及したわけだが)。しかし、銀行がもっと健康だったら日本の経済は本来よりももっと強かったと考えよう。その場合問題になるのは、じゃあ、何故日本の銀行はそんなに弱かったのか、と言うことだ。アメリカの銀行が抜け出せた危機から、何故日本の銀行は抜け出せなかったのか?

通常はゾンビ化のせいだと考えられているが、本当はそうじゃない。実際の問題は、日本の銀行が不良債権を弱った借り手に投資し続けたことにある。Joe Peek と Eric Rosengreen が指摘するように、90年代、日本の銀行は「常緑化 evergreen」─既に契約関係にある企業に対する貸し付けを上げ続ける、という手法に打って出た。そうすることでヤバい企業が利子を払えるようにし倒産するのを防ぐ(訳注: 要は自転車操業だ)。すると、銀行のバランスシートはよく見えるし、企業も操業が続けられるって寸法だ。Ricardo Caballero や Takeo Hoshi 、Anil Kashyap のような経済学者たちは、2000年初頭、30%の公開企業が「銀行からライフ・サポートを受けていた」と指摘している。

この影響は二つ。第一に、借り手からしてみれば、借金を実際に返せるめどは立たない(そもそもビジネスうまくいってないし)わけだから、日本経済は再度成長するための調整をすることができなかった。Caballero et al. はこの自転車操業のせいで投資の低下、雇用の低迷、そして経済全体の生産性の低下を招いたと結論づけている。第二に、銀行としては、収益性は限定される。もっと良い新しい契約をする代わりに、もうダメになった契約関係を続けなければならないってことだからな。その結果、健康的な経営に戻すまでお金を調達することはできなかったわけだ。(勿論、銀行を国有化しないことそのものが常緑化の一つの形だという指摘は正しい。違いは、大銀行(少なくともアメリカの場合)は何とか健康化する分のお金を調達できるということだ。)

というわけで、日本の経験を我々の場合に当てはめて考えてみると、重要なのは、日本の銀行は別に来月のバランスシートをよくしたいというだけでこの方策に乗り出したわけではないということだ。むしろ、社会的規範と明確な政府からのプレッシャーがそうすることを彼らに要請した、と考えるべきなんだ。(Peek と Rosengren は、日本では「多くの取引決定が、ヤバい企業を助けるという(思い込みの)義務に強く影響されている」と指摘している。)実は、 Peek と Rosengren は政府によってコントロールされている銀行は弱い企業に対してより貸し続ける(more だよ、less じゃないよ)という指摘をしているのだ。

アメリカの銀行はしばしば借り手に対して厳しすぎると指摘されているが、確かにこのような常緑化の政策をとろうとしてはいないようである。そして、日本の銀行とは違い、アメリカの銀行は、新しい貸し付けを延長しつつもなじみの借り手に厳しいことが経験から証明されている。結果、このようなとき(貸し付けの売上純利益率が高いとき)には、奴らは非常に収益性があるし、オバマ政権が信頼しているように、バリバリ稼いでトラブルを抜け出すことができる。この体質が変わると思わないのなら(アメリカの銀行が常緑化を初めて、古い借金を放置し続けると思うかい?)、日本と同じ道を辿ることは無さそうだ、といえる。

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